COLUMN
コラム
山に笠 頭痛(あたまいた)には 五苓散(ごれいさん)
「雨が降る前になると頭が重くなる」「台風が近づくと頭痛がする」
そんな経験はありませんか?
今日は、むくみ、頭痛、下痢などに適応のある五苓散についてのお話です。今は台風シーズンなので頭痛についてです。
(ゴレイサン、Poria with five ingredients、Wu-Ling-San (英語表記はKAIM (Kampo, Acupuncture and Integrative Medicine)誌のVolume 1,Special Edition(2005年)に基づいています)
数年前に『わかりません経方医学』(東洋学術出版社、2024年)を出版された愛知県の灰本元先生の研究に、「五苓散は雨の前に増悪する頭痛の約9割に有効である」「雨の前日に頭痛が増悪しない人に対し増悪する人は、約16倍の有効率(オッズ比が16)である」というものがあります。
これは、3か月以上の慢性的な頭痛があり、週1回以上頭痛を経験する42人(男性9人、女性33人)を対象に、頭痛カレンダーをつけてもらうことで、天気と頭痛の関係を記録し、五苓散を服用した場合に、頭痛の回数がどの様に変化するかを観察し、結果を統計的処理(多変量解析)した研究の結果です。(『Φυτο(フィト)』Vol.1 No.3 1999に載った慢性頭痛に対する臨床疫学研究)
要約すると「雨の前つまり、低気圧が接近する時に悪化するタイプの頭痛に対して、五苓散を服用すると有効率が高い」ということです。灰本先生たちは「気圧が下がり始めると体の中の水分(組織液)などのミクロレベルの水が脈管から組織へ漏れ出て微小なむくみ(浮腫)をつくる。これが重く締め付けられるような頭痛を発生させる」と推測されています。
五苓散は、こうした水分のバランスを整える漢方薬として知られています。
典型的な経験例としては、下記のようなケースがありました。
60歳台の女性。153cm,50kg。子供のころに交通事故にあい、以後、曇りの前日になると後頭部が重く時に鈍痛を感じ雨後には軽快するということを繰り返している。頭部MRI等の検査を複数の医療機関で行ったが器質的な異常はないといわれている。拍動性はなく、高血圧もない。
五苓散(TJ-17)7.5g/日の服用を開始。内服当日のうちに頭痛が軽減し、翌日以降は曇天前日の頭重感のみで頭痛には至らなくなり、4週後には頭痛は消失した。5g/dayに減量したが増悪は認めなかった。4か月後には台風シーズンも終了したため一旦終薬とした。
当院では、粉の内服がダメ、桂皮(食物でいえばシナモン)のにおいが苦手という方には、錠剤の製剤を出せるように薬局にお願いしています。
最後に、表題の川柳「山に笠 頭痛(あたまいた)には 五苓散(ごれいさん)」の解説です。
昔の忍者は観天望気(かんてんぼうき=自然の現象から天気を予測すること)により、山に笠雲(かさぐも)がかかるとまもなく天気が下り坂に向かい、雨が降るということを経験的に知っていたようです。低気圧や前線が近づき、湿った温かい空気が強い風に吹かれて山にぶつかります。次に、風が山肌に沿って上へ押し上げられ、空気が冷やされ水蒸気が水滴(雲)に変わり、これが山の頂上を覆い留まると笠のような形を作ります。国土交通省中部地方整備局 富士砂防事務所によれば、富士山の笠雲後の天気は24時間以内に雨となる確率は春秋が約70%、夏は約75%、冬も約70%らしいです。
梅雨から台風シーズンにかけて頭痛に備えて五苓散を用意しておくのは理にかなっているのかもしれません。
梅雨から台風シーズンにかけて、天気の変化とともに頭痛が起こる方は、是非一度ご相談ください。